2020年11月06日(金) |パコムレター
パコムからのメッセージ【11月】
2020年11月
パコムからのメッセージ【11月】
今年は、季節を感じることなく初冬を迎えようとしています。
春は、緊急事態宣言発令で自粛期間が長引き、せっかく購入していた春物のジャケットも出番を得ず、夏になりました。
ただでさえ暑い毎日、マスクをつけての外出は苦痛以外の何物でもありませんでした。
マスクのせいか、春の沈丁花も夏のくちなしも秋の金木犀の記憶にないなぁと思っていたら、10月の半ばを過ぎてからようやく金木犀の香りが漂いだしました。今年の猛暑で例年より開花が遅れていたようです。
11月の声を聞くと肌寒くなってきましたので、先週まではTシャツ姿だったのに、いきなり手軽なライトダウンを着ている人もちらほら見かけます。
日本は四季がはっきりしているので「合服」という文化があります。
合服は4月5月の春から梅雨への中途半端な時期と、10月11月の秋から冬への橋渡しの時期に着る服です。
いつもこの時期、何を着ようかと皆さんも悩んでしまうでしょう。
しかしながら、いつの間にか、合服を着用するという文化が薄れてしまったように感じます。
移ろう四季があいまいになってきたこともあるし、冷暖房完備の建物に中にいると、ひと昔前のように冬に分厚いセーターを重ね着することもなくなりました。扱いの便利な軽いダウンが冬の主役となって、世の中のトレンドはカジュアル志向。
ダウンの下にはTシャツというライフスタイルでも十分通用します。
ビジネスの場でもネクタイやジャケットが不要の時代となりました。
日本の熱帯のような夏にネクタイ締めて、冷房温度を下げるなんて馬鹿げたことをする必要もありません。
私たちの日常から「合服」のような位置づけのものは消えていくのかな、と少し複雑な気持ちになります。
いまやスーツ業界からは「合服」は絶滅状態に入っていると言われています。
スーツであれば素材や、裏地のしつらえによって、ずいぶん変化があると思いますが、最近の冬服はずいぶん薄い生地になってきているとか。
合服どころか、冬物と限定することもなくなり、オールシーズンのスーツが登場していますね。
ちなみに私はこの中途半端な季節を、綿のコートなどを着て出かけるのが好きです。
お気に入りの合いのコートを着ていたら、大阪駅で若い女性に「可愛い!」と言われ、きょとんとしていたら「そのコート可愛いですね!」と。
『コートか…』と心の中で苦笑しました。
「どこのコートですか?」と聞かれたのでブランド名を答えると「母もそのブランドが好きです!」と。
どうみても私たち世代のお嬢さんでした。
「もう10年前の服だから今は売っていないと思いますよ」と言うと残念そうな顔をされましたが、その場で差し上げるわけにもいかず、そこで失礼しました。
時代の流れに抗うことはできないでしょうけれど、ちょっとしたことで季節の変わり目を感じる心を失わないようにしたいものです。
合服文化が廃れたとしても、四季のある国に生まれたことを楽しみましょう。