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2015年05月13日(水) パコムレター

パコムからのメッセージ【5月】

2015年5月
 
パコムからのメッセージ【5月】
 
桜の季節も終わり、五月は藤の花が美しい季節です。
子供の頃、幼稚園のクラス分けで、「藤組」になりました。可愛い花の「バラ組」や「ゆり組」になるお友達がどんなに羨ましかったか…幼稚園児の私には、藤の花は、あまりに地味で遠い存在でした。
ようやくこの年齢になり、五月の新緑とともに淡い紫の藤の花を愛でることがで、できるようになりました。
五月の連休は、神戸から2時間程度で行ける京丹後へドライブに出かけました。車窓の眺めは、目に柔らかい新芽の黄緑色や常緑樹の深い緑と、その木々にまとわるように咲き誇る藤の花。
緑が見えない位、藤の花で覆い尽くされているところもあります。
でも、この藤の木は蔓(つる)で、木々に絡みつき、樹木そのものを弱らせ、価値を落としてしまうそうです。
つまり、手入れのなされた山林は、藤の蔓をきちんと打ち払って整備されているのです。
その昔は、蔓を求めて、山に入り、それで籠を編んだりしたものです。今は、そういったこともなくなり、藤の蔓が伸び放題になっていたのですね。そう思うと綺麗だ、と感心ばかりはしておれないのだと。山を手入れする人が激減しているのでしょう。
京丹後の海は日本海なので、鈍色のように思われていますが、五月の海は、蒼く透き通り、写真だけならハワイと言っても過言ではないくらい美しかったです。
時の止まったような穏やかな空間をドライブして帰ってきた日の夜のテレビで、京丹後に住まう60代の夫婦のドキュメンタリーをやっていました。
好彦さんと久代さんの2人の話です。久代さんは、幼い頃から聴力がなく、その後に視力も失います。久代さんの触手話のボランティアをしていた好彦さんと50代で結婚をして、京丹後の里山に移住しました。ドライブに行くなら楽しいところでも、視力も聴力もない彼女が住むには過酷とも言える環境です。好彦さんも地元の人ではないのに、その地に住み着き農業をやっています。
何でも便利で当たり前に手に入る都会の暮らしに比べると、ひとつのことをするのに何倍もの時間を要する里山の暮らしです。
それでも2人の表情はとても穏やかで、お互いを労わりあって、幸せそうに 見えました。
見えず聞こえない久代さんと好彦さんは、手を握りあって伝える触手話だけで、気持ちを伝え合うのです。久代さんには、好彦さんの表情も見えません。手と手で触れ合い、心と心が繋がる。
「見えず聞こえずとも、、、」久代さんの心の目には、見えているものがあるのでしょうね。
幸せの指標や価値観は、人それぞれ。